レース鳩」と「動物の愛護及び管理に関する法律


動物の愛護及び管理に関する法律(以下・・動愛法)は昭和四十八年に施行された物で
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S48/S48HO105.html
動物の虐待等の防止について定めた法律です。

社会環境の変化により1999年に改正、また昨今の犬・猫の虐待問題がクローズアップされると共に2005年に改正・・
当初は犬・猫を主眼とした規制強化でしたが、レース鳩もその法律により大きく影響される様になってきました。

さて、人は様々な形で動物を利用しております・・同じ種類の動物でも様々な利用形態がある訳で、
その利用方法で動物は分類されます。

分類は大きく分けて「産業動物」と「愛玩動物」2つのジャンルとなります

1.「産業動物」 経済動物
  産業動物(さんぎょうどうぶつ)は、その飼育が、畜主の経済行為として行われる動物の総称。

2.「愛玩動物(ペット)
  愛玩を目的として飼育される動物のこと

このジャンルを分けているのは生物の種の違いでは無く (あくまで人様の都合ですね)
終生飼養か非終生飼養か・・・「生と死」の違いです・・

ペットは終生飼養を目的として愛玩しますが、
産業動物は経済動物とも呼ばれ、主に食用に供される畜産動物などですから
天寿を全うする事は出来ません、

以下の図が動愛法(環境省)の考え方です

愛護動物の種類は以下のように規定されています
牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる、その他人が飼っている哺乳類、鳥類、爬虫類

という生き物はいろいろな利用がなされます、
食用・高級食材として珍重される国もありますし、実験動物としての利用、
昔は伝書鳩が手紙を運びました、

ではいえばととはどのような種類の鳩なんでしょうか?
ネットで検索すると「カワラバトの変種で、家禽(かきん)化した鳩。どばと。飼いばと」
よくわかりません・・・どうもレース鳩とは違うもののようです!

レース鳩はあまり食べませんので(食べる方もおられますが)産業動物のジャンルには入りそうもありません
ではペットでしょうか?

レース鳩はその名の通りレースに使いますから終生飼養を目的として飼育しているわけでもありません
私はここ10数年で鳩舎簿に1,700羽ほどの記録がありますが・・現在鳩舎には百数十羽しか居りませんので
大半はレースや猛禽類の襲撃により失ったことになります、これでは到底・・愛玩動物(終生飼養)とは言えません。

実はレース鳩・・産業動物のジャンルの中の「使役動物」と言う分類に入られています、
使役動物(しえきどうぶつ)は、耕作や交通手段などの、人間の作業のために使われる動物とされます。


産業動物に関わる様々な規制や法令等を主に管轄するのは農林水産省で
レース鳩協会/伝書鳩協会いずれも農水省(生産局)の「所管特例民法法人」に指定されています。

レース鳩は「使役動物」である


閑話
鳩の伝染病としてニューカッスル病がありますが、
ニューカッスル病は「ニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥」に関して家畜伝染病予防法の法定伝染病に指定されており
家畜伝染病予防法により感染が確認されると都道府県知事によって「殺処分命令書」が出されます、
レース鳩は指定動物では無いがND感染が確認された場合は保健所の指示(鳩に対して本来命令は出来ない)で殺処分と成る事例も多いようです。

養鶏場などで殺処分命令により鳥を処分しますと大きな経済損失が出ますが・・法律により損失補償があります
(指定家畜に係る保障金等)
国は、その所有する指定家畜を第17条の2第5項の規定による命令に従って殺し、又は同条第6項の規定により殺されたために損失を受けた者に対し、その生産に要する費用その他の通常生ずべき損失として政令で定める損失を補償しなければならない。

しかしながら、レース鳩は指定家畜ではないので殺処分しても保証金は出ないでしょう!

以下は鳩協会より先日配られた「中国における鳥インフルエンザ(H7N9亜型)の発生に係る防疫対策の強化について」の中の一文です、

4検査結果を踏まえた対応
検査の結果、H5亜型もしくはH7亜型のインフルエンザウイルスが分離された場合、
もしくはH5亜型もしくはH7亜型のインフルエンザウイルスに特異的な遺伝子が検出
された場合には、当該鳩群の自主淘汰を指導する。


淘汰の強制力は無いとして・・超高額な鳩をお持ちの鳩舎は笑い事ではありませんね。

それでは「レース鳩の売買」についてはどうでしょうか?

動愛法では動物の売買には登録許可(動物取扱業)が必要となります、
業とみなされるのは以下のとおりです・・

動物取扱業の『業として』の解釈

業としての要件

「業として」とは、社会性をもって、一定以上の頻度又は取扱量で、事業者の営利性を目的として動物の取扱いを行う、社会通念上業として認められる行為のことをいう。

社会性

特定かつ少数の者を対象としたものでないこと等、社会性をもって行っていると認められるものであること。

頻度・取扱量

動物の取扱いを継続反復して行っているものであること、又は一時的なものであっても多数の動物を取り扱っているものであること。
(少なくとも、年当たり2回又は2匹のいずれかを超える取扱いがある場合は、当該要件に該当します。)

営利性(事業性)

有償・無償の別を問わず、事業者の営利を目的として行っているものであること 。
(本来業務の営利性の向上を目的として、客寄せ等のために動物を展示するような場合も、当該要件に該当します。)
許認可が必要な5業種


動物取扱業の許可が必要なのは家庭動物や展示動物として利用する動物となっています、

この範囲から外れるものとして畜産農業に関わるもの・・

乗用、使役、競争用等の畜力の利用を目的として飼育または繁殖される牛、馬、豚、めん羊、にわとりをいいます。

「競争用」とありますのでレース鳩はこれにあたりますね!!

レース鳩は「競争用」である


【対面販売の義務化について】


なぜ対面販売・対面説明・現物確認が必要なのでしょうか、
それは不特定多数の方々に販売するために動物(犬・猫)の習性・成長の度合い・飼育方法・などの説明が不可欠というのが根拠です、

それではレース鳩の売買はどうでしょうか、

鳩レースを行うためには鳩協会に加盟する以外ありません
と言う事はレース鳩の売買は飼育知識を持った会員間に限られるわけで、
決して不特定多数の方々を対象として売買を行なっているわけではないのです。


レース鳩は犬猫と違い・・羽色こそ様々ですが単一な種で大きさはほとんど変わりません
ましてや会員間で飼育方法の説明など釈迦に説法・・ですね。

レース鳩の売買は古くから通信販売が利用されてきました、鳩の輸送方法なども確立されております
勿論海外でもインターネットオークションは盛んに行われています、
通信販売が活発に利用される理由としては・・姿形はもちろん重要ですが、
第一義として価値基準を血統に置いた取引のためでしょう。

また鳩協会会員は日本全国に散在しており通信販売を規制すれば
大きな目標であるレース鳩の形質改良を図る事を阻害してしまいます。


本来使役動物であるため対面販売の規制枠外であるし・・

レース鳩に「対面販売は馴染まない」


動取法が施行された当初は行政側も混乱し、
精査することも無く「レース鳩」の売買に取扱業の登録が必要とされてしまいました。

ドサクサに紛れて取扱業の免許を取得してしまいました・・
鳩協会も「必要です」と告知していますが、果たして本当に必要だったのでしょうか?